「永泉、来い」

泰明がこう言ってくるのは、いつも、本当に突然で。

時刻は、いわゆる丑三つ時。暖かな褥から引きずり出され、寝ぼけ眼の永泉はみぃみぃとないた。

「泰明殿、寒いです・・・」

「これでも被っていろ」

泰明の上着を掛けられて。

「泰明殿ぉ、眠いです・・・」

「寝るな。上を見ろ」

頬をぺちぺちと叩かれて。

「うえ・・・？」

見上げた空には、光の軌跡。

「うわぁ・・・・」

しかも、それが次々と。

まるでそれは、星が降るようで。

「すごい・・・すごいです、泰明殿・・・・」

傍らの恋人にしがみつき、一息に目の覚めた永泉は歓声をあげた。

「・・・そうか」

いつも無表情な泰明の声に、嬉しげな響き。

「あ、ふたつ・・・わぁ、今の、今の見ました!?泰明殿!!」

永泉も、常にないほどのはしゃぎぶり。

・・・そのとき。

くしゅん

「・・・・泰明殿?」

ちょっとだけ、気まずい沈黙。

「も、申し訳ありません・・・これ・・・」

上着を返そうとする永泉を、柔らかく押し返し。空を見上げたまま、泰明は言った。

「後で、おまえが暖めてくれればいい」

「・・・・・はい」

頬を染めた、永泉が答えて。

翌日

朝の早い寺で空が白むまで星を見たせいで、結局暖めてもらえなかった泰明が、風邪をひいたということは。

永泉にだけは、ないしょ。

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