movement
アスランの綺麗な指が伸びてきて、シンの手から飲料水のボトルを奪い取った。
その指に見とれている隙に、中身を全部飲まれてしまう。
「あ、すまない」
なくなった、と、悪気なく呟く赤い唇。それがあんまり色っぽくて、シンは思わず生唾を飲んだ。
「もうひとつ、取って来ます。まだ飲むでしょう？」
シンは慌てて立ち上がり、部屋の小さな冷蔵庫を開いて、振り返る。
ベッドのに身を投げたままの恋人の、柔らかな笑みが目に入り、シンの背筋を粟立てた。
「な、何が、いいですか？」
「水、まだあるよな」
「はい」
取り出した容器を手に戻ると、「ありがとう」と微笑んで。
シーツを引き寄せ、身を起こし。やっぱり綺麗な指が伸びて。
そのひとつひとつの仕草に、シンが目を奪われていることに、アスランは気づいているのだろうか。
「シン？」
「あ、はい」
空に浮いたままだった指に、ボトルを渡す。
しなやかな指にきゅっ、と力がこもり、受け取るさまにさえ、見惚れる。
はじめは、わけがわからない人だと思った。
だんだん、わけがわからないけど、とにかく強い人だと思った。
そのうち、わけがわからないけど、とにかく強くて格好いい人だと思った。
今は、わけがわからないけど、とにかく強くて格好よくて綺麗な人だと思っている。
「アスランさんって、綺麗ですよね」
こくこくと、一心に水を飲んでいたアスランが顔を上げた。
飲んでいたときも可愛いけれど、翠の瞳が自分を見て、ふっと表情を持つのはたまらない。
「男が綺麗と言われて、喜ぶとでも思っているのか？」
不満げな声に、シンは笑う。
「だって、本当に綺麗です」
言って、隣りに座り込み、まだ少し濡れた唇にキスをして。
「大好き」
口をついた言葉に、アスランの頬が赤く染まった。
戦場でもベッドでも、百戦錬磨の顔をしているくせに、こういうときに時折見せる、思わぬ初心さがシンを安心させる。
この人は、大戦の英雄でも、高嶺の花でもなくて。
確かに、シンの恋人なのだと。
ふい、と逸らされた視線を追って、翠の瞳をしっかりと捕らえて。
うろたえた仕草が可愛くて、また、キスを繰り返して。
「もう一回・・・いいですか？」
力の抜けた指先から、落ちる寸前のボトルを受け取ると、細い顎が上下して、ひくい声が囁いた。
「まったく・・・お前の気が知れないよ」
「なんで？」
嬉々として白い体をシーツに倒し、シンは軽く首を傾げてアスランを見下ろす。
長い腕が、片方、しなやかな動きで肩に置かれ、少年を、無意識のうちに煽る。
「どうして、俺なんか・・・」
ああまったく、この人は。
「だから、好きだって何度言えばわかるんです」
そうして、シンは肩にまわった腕を、もう片方の手で撫で下ろし。
「あんたの腕の動きが、優雅で好き。こうやって抱いてくれるときとか、あと、殴ってくるときの動きとか、見とれる」
「馬、鹿」
可愛い罵倒に、クスリと笑って。
それから、薄く開いた唇にキスをする。
「あんたの唇が好き。キスしてくれるときも好きだけど、何か食べるときとか、とってもセクシーなの、わかってます？」
さっきの、水を飲む仕草さえ、可愛かった。
「それから、目が好き。俺のこと見てくれるだけでドキドキする。今みたいに見てくれるのもイイけど、睨まれるともっとドキドキする」
言うと、本当に睨まれた。
そう、こんなときの目が、この人らしくて凄く好き。
それから、すうっと首から胸へと手を滑らせて。
頷く仕草とかも好きだけど、ちょっと省略。
だって。
「胸が、好き」
「んぁっ」
胸の突端が、もう、しこりはじめていたから。
そこを、指先できゅうきゅうと刺激して。
「ねえ、感じてます？」
「な、い」
「ウソツキ」
嘘が、もの凄く下手。
そんなトコも、好き。
「足も好き」
腿の内側に、キス。
「蹴・・・るぞ」
「うん、蹴飛ばされるとき、目にも留まらないって言うの？格好よくて好き」
言って、シンは柔らかな皮膚をした膝裏に手を差し込んだ。
「でも、こんな方が、好きだけど」
そのまま大きく割り開いて。
それだけで、足先がきゅっ、と丸まった。
自然とこうなってしまうのも大好きなのは、言ったら本当に蹴られそうだから、内緒。
「もちろん、ココも好き」
ぺろ、と。感じはじめているモノの先端を舐めて。
「んっ・・・・」
気持ちよさを隠せない、アスランの声と、ソレ。
「こっちも」
「あ、シンっ・・・・」
後ろの蕾も、ぺろり。
「ひくひくしてる。ヤらしい」
「や、め・・・」
羞恥に震える綺麗な体。
シンの肩を抱いていない方の手がシーツを彷徨い、それから長い指が、きゅう、とシンの髪を掴む。
この、一連の動きが好き。この人が、シンを欲しがってくれている証拠だから。
「ねえ、もういいですか？」
「ぅ、ん・・・・」
こくんと頷くかすかな動き。
それに、頷き返しながら。
「あ、ぁ・・・・」
深く深く沈み込むと、衝撃を逃がすために開かれた唇から、艶やかな声が洩れた。
それでもまだ足りなかったのか、首が振られて青い髪がぱさぱさと散る。
シンの肩を抱いていた手のひらが、不意に離れて顔を隠した。
感じてる顔が見えないのは残念だけど、この仕草が、シンはことのほか好きだった。
ああ、本当に。
この人は、その仕草のひとつひとつまで愛おしい。
「アスラン、さん・・・」
「っ、あ、シ、ン。ん、ぁ・・・・」
絡みつく内壁。
震えて縋りつく熱いからだ。
そんなものに翻弄されながら、シンは思う。
自分は、本当にこのひとを愛しているのだと。