もう、わからない
その昔。
そう、たとえば母の生きていた頃。
父と自分の関係が、どういうものだったのか。
アスランはよく、覚えていない。
自分が、父を好いていたのか、厭っていたのかさえ。
今はもう、よく、わからなくなっていた。
シーツに頬を押しつけるようにして、高々と腰を掲げ、アスランは、声を殺して喘いでいた。
もう、下着さえもつけていないそこは、隠すものなど何もない。
恥ずかしい場所を父に差しだし、その中を節の立った指で深く、浅くと探られて。
それを敏感な粘膜で感じ取り、思わず腰を揺らしてしまい、ぱしりと尻を叩かれる。
びく、と震えたそこが、きゅう、と硬い指を締め付けた。
「はしたないぞ、アスラン」
「・・・・ごめんなさい・・・・・」
ぐっ、と脚に力を入れて堪えると、中にある父の指を。その動きをことさらに感じてしまい、アスランは泣きたくなった。
こんなことが。
どうしようもなく気持ちいい自分が、恥ずかしかった。
「ん・・・・っ」
堪えきれない喘ぎが漏れる。
また、尻を叩かれる。
ぱん、と当たった手のひらが離れるその一瞬、自分の肌が、その指に吸い付いていく。
「ぅふぅ・・・・っ」
さっきよりもいやらしい声が唇を割ってしまい、弄られて濡れたそこに、はあ、と仕方のなさそうなため息がかかるのがわかった。
呆れられた、と思うと悲しくて、しかしアスランにはどうすることもできない。
ただ、父の硬い指に蹂躙されて喜ぶ、いやらしい肉襞をひくつかせながら。
シーツに頬を擦り付けて、涙をこぼすことしか、できない。
「まったく、お前は・・・・」
言葉とともに、ずるり、と指が引き抜かれる。
あ・・・と名残惜しく思ったアスランは、なんとかそれを声に出さないことには成功し。
それでも、引き留めるように絡みつく襞を止められずにいた。
もっと、嬲って。
いやらしい俺の体を、どうにかして。
そんなところを父に見られるのも、触れられるのも嫌なはずなのに。
そう思ってしまう自分の体が恥ずかしい。
もうイヤだ。
助けて、・・・父さん。
言葉に出さず、助けを請う相手は、今、自分を蹂躙している男。
その矛盾に、アスランは気づいていない。
気づいてしまえば、アスランの救いは何処にもなくなる。
だから。
アスランは、気づかない。
崩れそうだった腰を引き上げられる。
中を嬲りつくした指を引き抜かれ、未だひくひくと震えているそこに、もっと熱い、もっと大きなものがぐっとあてがわれる。
期待に、その奥までもが震えた。
腰を掴んだ固い指の幾本かが、まだ、生ぬるい粘液に濡れているのがわかった。
「っ、あーーーっ！」
ずくり、と、一息に奥まで入られて、アスランはたまらず悲鳴を上げた。
痛みの鋭さに、父の大きさに耐えきれず、そこが裂けてしまったことを知る。
しかし、その痛みさえ快感で。
「やっ、あ・・・・」
奥まで入られれば、ひくつくそこはたっぷりと男を包み込み、その
喜びに、うねって震えた。
「う、ふぅ・・・っ」
ああ。
きもちいい。
体の中に、熱い芯をねじ込まれているこの時間だけが、アスランが今、生きていると実感できる唯一の時間だった。
「あ、あんっ・・・・っ」
ずるずると動かれれば、つられてまた腰が揺れる。
ぱん、と腰を張られて、それでももう、止めることができない。
「あ・・・あ、あぁ・・・・ん」
シーツにすがりつくようにして、喘ぎ、悶えるアスランに業を煮やし、パトリックは藍色の髪を掴んで力任せに引き上げた。
「い、あ・・・っ！」
あまりの痛みにびくびくと身を強ばらせ、そうして更に父を食い締めながら、アスランは喘いだ。
気持ち良過ぎて、どうにかなりそうだった。
「やめなさい」
しかし、父の言葉は冷たかった。
「レノアは、もっと慎ましやかだった」
「ご・・・め・・・・あ、あんっ！」
ごめんなさい、お父さん。
そう言いたいのに、父の嫌がるいやらしい声が、勝手に洩れて、止まらない。
掴まれていた髪が離された。
再びシーツに突っ伏して、それにすがりつきながら、アスランは父の言葉に背いて腰を振り、いやらしい襞を蹂躙される喜びに喘ぎ、悶えながら、それでも震える声を絞り出した。
「ごめんな、さ・・・・あっ！」
しかしそれも、喘ぎに途切れて。
「あ、あ、あ、ああ・・・・・っ！」
体の一番奥深く。
父にしか許していないそこに、熱いものをたっぷりと注がれて。
実の父に犯されているという、その事実をどうしようもなく感じさせられて。
アスランも、触れられていないそれから、はたはたと精をこぼす。
「あ、ふ・・・ぅ」
父は、何も言わなかった。
無言で腿を叩いて叱責し、再びアスランを蹂躙していった。
ぐちゅぐちゅと、放たれたものが粘膜の中で攪拌されて、いやらしい音が部屋に満ちる。
それに自分の喘ぎが混じるのを聞きながら、アスランはただ、体中で父の存在を感じていた。
その昔。
そう、たとえば母の生きていた頃。
父と自分の関係が、どういうものだったのか。
アスランはよく、覚えていない。
自分が、父を好いていたのか、厭っていたのかさえ。
もう、よく、わからない。