Love
だれでもいいから、俺を愛して欲しかった。
幼馴染の少年は、一時、それを俺にくれた。
でも、別れ別れになって。
もう一度会ったときは、敵になっていて。
戦って戦って、もう、いいんだよと手を伸ばされても、その手はもう、俺だけのものではなくなっていた。
その後、手を取ってくれた少女は忙しくて。
沢山のものを抱えていて、それを手伝えば愛してくれるかも知れないと思って頑張ったけれど、俺の力はいつも足りなくて。
つないでいたと思っていた手は、いつの間にか、離れていた。
そうして出会った、赤い瞳の少年。
彼が欲しがるから、とりあえず体を差し出した。
それはあっという間に奪われて、それでもシンはもっと欲しいとねだってきた。
アスランは、呆然とした。
だって、今、アスランが持っているものは。
少年に差し出せるのは、それだけだったから。
どうして、自分はこんなにも何も持っていないのだと、そのとき初めて歯噛みした。
もっと何か、あげられるものがあったら。
彼は、俺を愛してくれるかも知れないのに。
もうないのだと、少年に言うのは辛かった。
君にあげられるものを、もう、俺は持っていないのだと。
それでも。
「持ってるじゃないですか」
少年は、子供の残酷さでアスランに迫った。
「オレは、あなたの心が欲しい」
俺の、心。
アスランは、泣きたくなった。
ごめん。
俺に、心なんてもうないんだ。
だってそんなもの、持っていても辛いだけだったから。
君が、そんなもの欲しがるなんて思わなくて。
そんなものが、いるなんて思わなくて。
とうに、捨ててしまったんだ。
君の欲しいものを、俺はもう持っていない。
君に、あげられるものがない。
そう言って泣くアスランに、シンは苛立ったように詰め寄った。
じゃあ、なんであんた泣いてるんだよ。
心がないのに、なんで泣くことなんかあるんだよ。
抱き寄せられて、キスされて。
また、体を差し出せと言われているのがわかって。
大人しくそれに従いながら、アスランは声もなく泣きつづけた。
俺の、どこを開いても、心なんて残ってない。
それが、かなしくて。
シンに、あげられるものがない。
それが、かなしくてかなしくて。
そんなアスランに、シンはまだ、ねだり続けた。
なら、あんたをぜんぶ、オレにくださいよ
こくり、とアスランは頷いた。
そこに、君の欲しいものはもうないけれど。
それで、いいのなら。
君の欲しいものを、もう持っていない俺だけど。
何も持たない、俺だけど。
君に、あげられたものの分だけでいい。
ほんの欠片ほどでいい。
俺を、愛してくれるなら。
俺のぜんぶを、君にあげる。
そう、言うと。
シンは、両手をいっぱいに広げてアスランを抱きしめた。
じゃあ、オレも、オレのぜんぶを、あんたにやるよ。
それで、絶対わからせてやる。
あんたは、ちゃんとオレが欲しいもの持ってる。
持ってて、もう、それはあんたごとオレのものだ。
「愛してるよ、アスランさん。」
だからあんたも、オレを、愛して。