子供の丸みを残した肩が、するすると引き上げられたシーツに隠されるのを、柾は煙草に火を点けながら、目を細めて眺めた。

「あーあ、浮気しちゃった」

声変わりを終えたのかどうか、いまいち判然としない声が呟き、シーツの塊が丸くなる。

「誘ったのはお前だろうが」

ライターを放った手でその塊をひっくり返し、柾はその『浮気者』のカオを覗き込んだ。

シーツに散った漆黒の髪、ちいさく喘ぐ赤い唇。上気した頬に、散々泣かせたせいで潤んだ大きな瞳。

こんな見てくれで、誰かのペットにもならずにロウアータウン最大勢力を誇ったチームを率い、今は雷帝に下ったとはいえ、VOLTS四天王を名乗っているのだから、この「絃の花月」は只者ではない。

「だからって、あんな・・・・」

しかし、そう言って俯く仕草はまだ幼く、彼がまだ１５，６の少年であるのだと思って、柾は少し、笑った。

「まぁ、これに懲りたら喧嘩なんぞせすに、飛針の坊やと仲よくやるんだな」

この、恋人と喧嘩をしたのだと言って転がり込んできた年下の仲間には、かなりいろいろと、面白いことをしてやった。

幼馴染の少年しか知らないという花月は、おそらく随分酷いことをされたと思っているに違いない。

そう思っていた柾だったが、相手はやはり無限城ジャンクキッズ。ふるふると首を振り、したたかに笑う。

「懲りるなんて・・・とても勉強になりました。えぇと、アレは嫌だけど、最後のアレはよかったし・・・今度、十兵衛で試してみよう」

浮気ばれるかなー、また喧嘩かなぁー

ごろごろと狭いベッドの上を動くシーツの塊をつかまえ、柾は軽く笑ってその端をめくった。

「なら、こういうのはどうだ？」

シーツの襞に、器用に手を差し込んで、花月の小さな尻を探り当てる。

吸い付くようなその狭間に指を滑り込ませ、散々愉しみ、愉しませてやったそこを、改めて嬲る。

「んんっ・・・まだ、するの・・・・？」

しっとりと熱を含んだ肉襞が、淫らに指に絡みつき、時折きつく締めつけては、腰自体がゆるゆると揺れる。

大人しくなったのを見計らってシーツを剥げば、薄い茂みの中からほの紅く染まった象徴が快楽の芽を示して震え、成長期の危ういバランスを秘めた肢体が、風鳥院独特のしなやかさを持ってうねった。

こいつは、本物の上玉だな。

指をいきなり三本に増やし、甘い悲鳴の上がる体を押さえ込みながら、柾は心中呟いた。

こういう、少年期特有の美しさを売る男娼は多いが、その商品としての寿命は短い。

しかし、このわがまま姫は本物だ。今もかなりのものだが、あと２、３年もゆっくり仕込めば、極上の体に仕上がるだろう。

バビロンシティに戻るとき、持って帰りたいものだな。

不埒な思いが頭を掠めるが、彼にベタボレの幼馴染が、それを許すまい。

くく、と笑った柾は、それを花月に咎められる前に、彼の感じる場所を、激しく抉り込んだ。

「あっ、あんん・・・来栖さん、もぅ・・・・」

濡れた声は、過ぎる快楽に上ずっている。

しかし柾は、この体を貫いて愉しむよりも、悶える花月を見て愉しむ方を選んだ。

「すぐしたってつまらないだろう。・・・・それに、別に指でイっても構わないぞ」

「僕が構っ・・・・あっ・・・・・」

いきなり前を咥えられ、後ろを思い切り拡げられて、花月は思わず仰け反った。

こらえる間もなく、またそのつもりもなく、だいぶ薄くなった体液を滴らせる。

「構うんじゃなかったのか？」

ぐちゅ、と音を立てて花月の後ろから指を抜き去り、その指で、長い髪を取って口元を拭う。

黒い髪に白い粘液が纏わりつき、花月はその髪をわしづかむようにして取り戻した。

「もうなんだっていいですよ・・・・・なんでコレで拭くんですか・・・・」

これ、十兵衛にために伸ばしてるのにー！と悪態をつく花月。

「変な貞操だな、お前」

しかもその髪を、相手の男の腹に擦り付けて拭うのもどうかと柾は思ったが、面白いので黙ってやらせておく。

「僕の勝手です」

じろりと柾を睨み上げた花月は、今度はシーツで髪をごしごしとやり始めた。

なんだか可愛い。

やっぱりちょっと持って帰りたい。

あのクソ真面目な坊やが、道を踏み外すわけだ・・・と思って、柾はその坊やと喧嘩をしてきたという話を思い出した。

「だいたいなんだって喧嘩なんかしたんだ」

なんだかんだと言いつつも、やはり幼馴染を一番に想っているのがよく分かる花月が、あてつけに他の男に抱かれるほどの喧嘩の原因が、柾は少し気になった。

ちいさなきっかけで、人間同士の関係というものは崩れるものだ。今、VOLTS内での内紛は好ましくない。

「・・・・言えません」

言った花月の拗ねた様子。

ああ、何かくだらないことだな、と少し安堵する。

「付き合ってやったんだ。教えろよ」

「言ったら笑うから言いません！」

顔を真っ赤にしてそっぽを向く花月を見て、柾はある物のことを思い出した。

「へぇ」

そう言うと、柾は部屋の隅、もともとあったがらくたと私物が渾然一体となったあたりを物色し始める。

「ああ、あった」

探し出してきたのは、いわゆる『大人のおもちゃ』。

しかも、巨大な男性器を模したと思われるソレは、さまざまな突起や凹凸で、とてもとてもグロテスクだった。

「ぅわ、来栖さん、本気！？」

逃げようとした花月の細い足首をつかまえ、柾は意地悪げに笑う。

「入れられたくなかったら、大人しく言ってみろよ」

「嫌だ！」

それはもう、言うのが嫌なのかそんな物を使われるのが嫌なのかもわからない嫌がりっぷりで、柾の嗜虐心をくすぐった。

軽い脅しと冗談のつもりで持ち出したのだが、ものすごく使ってみたくなった。

「言わないのか？」

手に取ったモノを、じたばたともがく花月の胸に放り出し、びくりと動きが止まったところで、さっきイッたばかりのものを握りこむ。

「やっ・・・・」

「言わなきゃ入れるぞ」

もう入れる気満々だが。

「いやだ、くるす・・・」

前を揉みこまれて力の抜けた腰を、体重をかけて押さえ込む。

身を捩った花月の白い胸から、グロテスクな玩具が転がり落ちる。

嫌がりながらも芯を持ち始めた花月自身から手を放し、ソレを拾い上げた柾は、掴んだ足首を高々と掴み上げて先ほどいじり倒した蕾を覗き込んだ。

そこは赤く染まり、ひくひくと震えている。

「で、言わないのか？」

細かい突起のついた先端で、そこを軽くつつく。

「やだぁっ！」

可愛い悲鳴が耳に心地よく、柾は機嫌良くソレをそのままねじ込んだ。

「やぁっ、ばかぁぁ・・・・」

冷たくて大きくて変に凹凸のあるものが、感じやすい内壁を無理やりに押し開いて侵入ってくる。

花月は無理やり手繰り寄せたシーツにしがみつくようにして、異物を呑まされる感覚に耐えた。

「はぁ・・・・・っ」

子供っぽさを残した体が震え、嫌らしい玩具を咥えてすすり泣く。その眺めはかなりイイ。

『戦慄のプリンス』の、こんな媚態を知っているのは自分だけだろう。あの幼馴染が、こんな啼かせ方をするとは思えない。

「で、なんで喧嘩なんかしたんだ。ん？」

答えがないのを承知でなおも問い詰めつつ、開ききった蕾から覗く、含みきれなかった部分をつついた。

「やだぁ・・・・もう、じゅうべぇ・・・・」

そこでその名前が出るか。

くつくつと笑って、柾はそのスイッチを、花月の目の前に持っていく。

「動かすぞ」

「うあぁあああ・・・・・っ！」

花月の体がびくんと跳ね、本物の悲鳴が上がった。

こらえ切れない衝撃を、少しでも逃がそうと腰を振り、玩具に抉りたてられてまた悲鳴を上げる。

「じゅうべ・・・え・・・・やだ、たすけ・・・・・」

それでも、幼馴染とやらに仕込まれた体は、反射のように感じて前を立ち上がらせている。それに指を掛け、震える熱を愉しむ。

「強情なお姫様だな」

「っ、あああっ・・・・」

ささやくとともに強く前を弄ってやると、無茶な快楽に慣れない体は、あっさりとまた蜜を吐き出した。

「・・・・・・で、言う気になったか？」

無理やり含ませたものを止めてやらないまま、柾はもう何度目になるかもわからない問いを口にする。

「と・・・・って・・・・・」

はぁはぁと、荒い息の下で、やっとそれだけを言った花月に、自分の言葉が通じていないのに気がついて、柾はとりあえずソレの動きを止めてやった。

「言ったら取ってやるよ」

言わなきゃまた動かす、と、スイッチで腹をつついてやると、観念したのか小さな声でやっと答えがあった。

「じゅうべえが・・・・・ってきたから・・・・」

「聞こえないな」

いったんスイッチを入れて、すぐに切る。

ぐったりと横たわっていた細い体が一瞬跳ね上がり、悲鳴と喘ぎに掠れた声が、やけくその様に大きく響いた。

「じゅうべえがっ！コンドームなんか買ってきたからっ！！」

「はぁ？」

「言ったんだから取れ！」

癇癪を起こした花月は、柾の腹を蹴り飛ばして、また、内を抉られてうずくまった。

「ばかぁ・・・とれ・・・・・」

まあ、一応言ったわけだしな、と、ずぷりと音を立ててソレを抜き出してやると、今度は何の容赦もない蹴りが飛んできた。

「変態！ロリコン！むっつりすけべ！」

段々レベルダウンしているのは気のせいだろうか。とりあえずむっつりすけべは否定しないが。

「で、なんでゴムなんだ。俺もさっきしてやっただろうが」

しないから、と喧嘩になったのならまだわかるのに。

「来栖さんと十兵衛じゃ、違う・・・・」

ぎんぎんに睨む花月は、しっぽを膨らませた子猫のようで可愛い。ああ、本当に持って帰りたい。

「なるほどな、旦那に他人行儀なことされて嫌だったのか」

しかし十兵衛も恋人を思っての行動だろうに・・・と思うと、少し憐れだ。

「冷静に分析しないでもらえますか・・・ああもう、腹立つなぁ」

ふらつく足でベッドを下りた花月は、床に落とされていたシャツとジーンズを掴んでぎこちない動きで纏った。

「戻るなら、送るぞ」

「修羅場りそうだから、いいです」

あんなに怒っていた割にはあっさりと言い、しかしドアを開けたところで足をもつれさせた。

それを、柾が抱きとめる。

「どっちにしろ、お前をこのまま帰したら坊やが黙ってないだろうが」

「面白がってますね・・・」

軽い体を、仔猫のように抱き上げて。

さて、あの仔サムライに、どうやって説明したら楽しいかと、柾は頭を巡らせた。

上へ戻るには、まだ時間がある。

それまでは、ガキのお守りも悪くない。