可愛い、人
快楽の余韻に身を任せ、甘い吐息を枕に落とすアスランの頭をかき寄せて、シンはお疲れ様のキスをした。
口の中、愛し合うようなキスに応える舌は、最近やっとぎこちなさが消えた。
「ん・・・」
きゅっと舌を食むと、ふるっと体全部が震える。
何でも知ってるような顔してるこの人の、こんな可愛いところが見られるのは、ベッドの中だけ。
セックスに不慣れなのはどう見たって明らかで、この体がシンしか知らないのはよくわかってて。
よくわかってて、それでもあんまり可愛いから、ちょっとからかってみたくなった。
「アスランさんって、もしかして、童貞？」
カッと頬を赤らめて、顔を半分枕に埋めたまま、涙目でシンを睨むさまは、怖いよりずっと、可愛い。
「婚約者、いましたよね？」
「ラクスとは、そんなんじゃないよ」
言って、ころんと寝返りを打って見上げてくると、なんだかもう、いつもの年上の顔をしてて、ちょっと悔しい。
悔しいから、ぎゅ、と胸の上に乗ってやる。
アスランは笑ってシンの背を抱いてくれて、またちょっと悔しくなったけれど、気持ち良いからもういいやってことにした。
「じゃあ、どんなの？」
ほっぺたにキスをして、まだ潤んでいる翡翠色の瞳を覗き込む。
「・・・同志、かな。恩人かもしれない。昔、ものすごく困ったときに、背中を押してくれた人だから」
笑った瞳は、シンより遠くを見ていたけれど、優しい手が、髪を撫でてくれたから、良しとした。
「色気ない」
「だから言っただろ、そんなんじゃないって」
言って、アスランからキスをくれる。
触れるだけのキス。
そう。もうどうしようもなく奥手のこの人だから、シンのように押し倒すくらいしなければ、コトに及べるわけがない。
及んでしまえば、こうやって甘やかしてくれたり、可愛い顔見せてくれたりして特典満載だけど、ここまで行き着いたのは、恐らくシンだけだ。
それがすごく嬉しい。
「ねえ、オトコになる前に、オンナになったのって、どんな気分？」
首にぎゅーっと抱きついて。
藍色の髪に頬ずりして。
馬鹿なこと聞いてるなぁと思いつつ、だってあんまり可愛いから。
「聞くなよ・・・、頼むから」
ほら、赤くなって、目をそらして。
そのくせ、すぐに思い当たったように、シンを睨んで。
「待てよ。だいたいそれ、お前のせいじゃないか」
「えへ」
そのとおり。
シンが、頼み込んで押し倒していろいろ触っていじって突っ込んで泣かせて。
「でも、許してくれたのはアスランさんですよ」
いくら強引に押し倒したって、英雄と言われた人を無理やりヤるなんて無茶な話だ。
許して、くれたから。
シンとしてもいいって、思ってくれたから。
だから、シンとこうしていてくれる。
「・・・・・・」
真っ赤な頬に、キスをして、いっぱい愛した体を、いっぱい抱きしめる。
確かな手ごたえが心地よくて、自然に抱き返してくれるのが嬉しい。
ちょっとむくれた頬が、可愛い。
大好き。
「ねぇ、どんな気分？」
こっそり、下に手を忍ばせて、まだぬかるんでいるそこに触れた。
「っ、シンっ」
慌てた声が、すぐに甘くなる。
「んっ、あ・・・」
差し込んだ指が、柔らかな襞に心地よく迎えられる。
奥手なくせに、カラダはヤらしい。
もともと素質があったんだろうけど、こんなふうにしたのはシンだ。
なんて、愛しい体。
「ほんと、女の子みたいだ。可愛い」
「女・・・ってっ」
シーツを掴んで逃げようとするけれど、本当に嫌な時には容赦なく殴る蹴るだから、このくらいは気にしない。
「だって、あなた俺のオンナでしょ」
「この馬鹿・・・っ」
殴られたけど、力入ってないから気にしない、気にしない。
「あ・・・ぁ・・・・」
まだ、余韻の残る体に火をつけるのは、簡単。
ほんとに、愛しい体。
愛しい、人。
「大好き」
口にすると、それを塞ぐように唇を押し付けてきた。
照れてるのが可愛い、もっとしちゃいたい。
だから、シンはその唇を舌で押し開きながら、同時に、下肢にも割り込んだ。
「ん、んんっ・・・・！」
嬌声は、全部シンの口の中。
シンは、全部アスランの中。
交じり合って、溶ける。
シンの恋人は、格好良くて奥手でヤらしくて。
年上の。
可愛い、人。