勝手
とうとう敵わなかった射撃はもう、諦めた。
なんで動く的のド真ん中を次々と打ち抜けるのか、シンにはよくわからない。
でも。
「次はナイフ戦！お願いします！！」
シンは、ナイフ戦はずっと一位だったのだ。
これならきっと、勝てるはず！
「ああ、わかった」
しかし、銃の手入れを済ませたアスランは、何でもないことのように答えてきて。
覚悟しろよコノヤロウと、シンは思い切りいきり立った。
アンタほどほどにしなさいよ、と、相変わらずアスランに教えてもらっていたルナマリアは、お姉さんぶってため息をついた。
狭い戦艦内、訓練場は多くはない。
射撃をやめて、的を片づけた同じ場所で、刃を潰したナイフを構える。シンは上着を脱いだのに、アスランは赤い制服のままだ。
潮風に裾がハタハタとして、なんかちょっとカッコイイんだけど。
でもなんか。
なんかムカつく。
しかも。
「じゃー、初め！」
しゃんとしているのかそうでないのか、あやふやなルナのかけ声とともに飛び出したシンを、ひょいとアスランは避けてしまった。
「・・・あれ？」
しかも、そう呟いて小首を傾げる。
何が「あれ？」なんだかよくわからない。
よくわからないけど。
むっかつくー！
重心を下げて、相手の出方を見る。
アスランは、構えというような構えではなく、普通につっ立って、なんだか不思議そうにシンを見ている。
せめて構えろコノヤロウ！
ムカついたから、速攻で膝を狙った。
速さと低さはシンの武器だ。
これで勝てなかったことなんて、ほとんどない・・・はずだったのに。
ひょいと目の前から消えた膝の代わりに、どすんと腹につま先が入った。
「え、うわ、そうか」
真上の方から間抜けな声。
そのまま、頭から床に突っ込みそうになり、慌てて受け身を取ったものの、すぐさま右手を押さえ込まれて首筋に冷たい感触が当たった。
足の上にも重い感触。たぶん、膝で押さえ込まれてる。
すっかり動きを封じられてしまったシンは。
「・・・・降参、です」
半分泣きそうになりながら、そう言うしかなかった。
「ああくっそ、なんで勝てないんだよ！」
癇癪を起こす恋人に、アスランは思わず苦笑いだ。
「いや、お前強いだろ」
「アンタが言うとイヤミなんだよ！」
なんだか余計に怒らせてしまった。
しかも。
「俺は、自分より大きいのとばかりやってきたからな。お前とだと、勝手が違ってやりにくい」
うんうん、と頷きながらそんなことを言われては、怒るなと言う方が無理なのだ。
「俺だって！あと２年もすればアンタくらいにはなりますよ！」
「いやだから、俺は大きい方じゃないんだが」
そうぼやいたアスランは、もう面倒くさいから、手っとり早く恋人を黙らせる方法を取った。
カッカしている黒い頭を抱き寄せて、フーッ、と唸る唇に、問答無用で口付ける。
自分のものよりも随分と熱い舌をぺろりと舐めて、そのまま絡めてちゅっと吸う。
「ん、っ」
そうすれば、シたい盛りの少年は、自分の方からせっせと舌を絡めてきて。
そのまま、ベッドに座ったアスランを、ぐいとばかりに押し倒した。
「誤魔化された・・・」
「はは」
息継ぎに離した唇で囁き合う。
笑ったアスランがムカつくから、もっといっぱいキスをする。
キスをして、上着を取って。
アンダーをまくり上げて、なんだかイヤらしく勃ってる乳首に、ちゅーっ、とキスをして。
そのまま、胸やわき腹にキスをしながら、ベルトのバックルを外して、ズボンを脱がせて。
下着を取る手はどこかまだ恐る恐るで、それでもその後は、なんだか慌てた様子で任された脚を広げさせる。
せっせ、せっせとコトを進めるシンの様子を、どこか微笑ましく眺めていたアスランは、奥に指を埋め込まれ、んっ、とひとつ喘いでから。
「いや、でも、そうなんだよな」
そう、ほつりと呟いた。
「俺は、自分より大きいのとばかりやってきたから。お前とだと、勝手が違って・・・」
「ア、アンタって人はぁ！」
ソコに指を突っ込んだまま、シンがなんだか涙目になった。
ぐいぐいと指を動かして、もう黙らせてやれと頑張るのだけれど。
「面白いんだけど、なぁ」
喘ぎに紛れて呟かれて、半泣きの上に半ギレになる。
「面白いって言うな！」
ああもう、こーしてやるー！とばかりに、奥の方まで指を突っ込むと、細くて固いその感覚は、やっぱり勝手の違うもので。
それに感じたアスランは、あんと鳴いて腰を浮かせた。
「もう、いいから」
シン、と、濡れた声で名前を呼ばれる。
素直に開かれていた白い脚が、挟み込んだ少年の体に絡みつく。
気持ちのいい肢体に溺れかけ、それでもシンは頑張った。
「面白い、とか、言わないでくださいよ」
誘いたいのはわかるのだけれど、スるにはちょっと邪魔な脚を押し開いて。
そうお願いすれば、アスランは濡れた瞳でふうわりと笑った。
「ん・・・じゃあ」
しなやかな腕がするりと伸びて、シンの腕をきゅうっと掴む。
「大好きだ、よ」
そう囁かれれば、もう、ガマンも何もあったものではなかった。
「アンタって、ヒトは」
そう呻くと、引かれるままに体を倒し、開いた脚の間に、自分自身を押しつける。
ずるりと飲み込んでいくそこは、指で感じるより百倍熱くて。
その質量に耐えるアスランは、指でシてる時より万倍イヤらしかった。
だから、シンは暴走して。
夢中で腰を動かして。
熱くてキツくてキモチイイ、アスランの中を目一杯感じてしまって。
そうして、あっという間にイってしまった。
「・・・・・・」
どうしよう、どうしようとあわあわするシンを乗せたまま。
脚に食い込む指の力や、たっぷりと濡れた奥の感触。
それから、未だ中で脈打つ熱い楔の心地よさを堪能しつつ。
アスランはうすらぼんやりと呟いた。
「ん・・・やっぱり勝手が違う・・・・・」
しかしシンはもう、勝手がどうこうという場合ではない。
「もー１回！もーいっかい！！」
挽回するから！しますから！と騒ぐ、年下の恋人は。
やっぱり、勝手が違うのだ。
その場限りの恋人とは。
やっぱり勝手が、違うのだ。
だからアスランは両手を伸ばし、とびきりの笑みで囁いた。
「何回でも、付き合ってやるよ」
お前が何回失敗しても。
何回でも、何度でも。
やっぱりいろいろ間違える俺でも、お前がそれで、いいのなら。
言わなかった台詞はもちろん伝わらず、それでもシンは満面の笑みで応えてくれた。
「やっぱ、アンタ大好き」
それからたくさんキスをした。
たくさんたくさん、キスを、した。