祝いたいから
「シン、誕生日に何が欲しい？」
『シン、夕飯に何が食べたい？』
それと同じトーンで聞かれたシンは、風呂上がり、両手にタオルと水のボトルを持ったままのその人に、呆れながらもいつも通りの答えを返した。
「アンタ」
「そうじゃないだろ」
ボトルの底でぼこんと殴られた。
ペットボトルだから、そんなに痛くはない。
「工具とかレアメタルとかいろいろあるだろうが」
「それアンタが欲しいもんだろ！」
その欲しいものもアレだが、全部突っ込んでいたら埒があかない。
２月後のアスランの誕生日には、レアメタルは無理でも触媒用の金属で指輪でも作ってやろうかと、半ば本気で思いながら、シンはぼふんとベッドに座り込んだ。
帰ったら汗だくだったので、シャワーは食事前に浴びてしまった。
アスランを待っていたのは、今日はさせてくれるかも、の期待からだ。
「だいたい、もう誕生日って年でもないでしょう」
来るかなー、ダメかなー
そう思いながらアスランを見上げていると、彼はボトルの水をごくごくと飲んで、晒された白い喉でシンの喉までごくんとさせてから。
ぽふん、とシンのすぐ側に座った。
「そんなこと言うな」
ふわん、と風呂上がりの肌の甘い匂いがして、シンはまた、ごくん、と生唾を飲んだ。
着込んだパジャマの胸元から見える、ほんのりと色づいた肌が、綺麗だ。
そうして、もっと綺麗な緑の瞳が、シンのそれをのぞき込んで。
シンの世界を、アスランでいっぱいにして。
「いくつでも、俺が祝いたいから祝うんだ」
「・・・アンタ、勝手過ぎ」
それでも、顔が笑ってしまうのはなんでだろう。
やはり、ほんのりと上気した頬に指を滑らせると、アスランから唇を寄せてきてくれた。
ちゅ、と、軽いキス。
すぐに離れたそれを追いかけて、また、キス。
甘い甘い口の中まで、アスランの舌を追いかけて。
やっぱり甘いそれをかじると、気持ちのいい長い指が、シンの頭を抱き抱えてくれて。
そのまま、それを引き寄せるように。愛しい体はぽふん、と、やさしい重さでベッドに倒れた。
「っ、はぁ・・・・」
アスランの体は、その気になってくれさえすれば、いつだってシンを気持ちよくさせてくれる。
それに、アスランだって。
「アスランさん、きもちいい？」
「んっ、こら、そこ、やめ・・・っ」
感じやすいと知っているところを、繰り返し強く突いてあげれば、アスランは腰をよじってそこを絞り、シンをきゅうきゅうと締め付ける。
シンは、気持ちよくなってるアスランが好きだ。
いつも、偉そうで勝手な恋人が、もの凄く可愛い顔を見せてくれるから、好きだ。
「アスランさん、可愛い」
そう言いながら、アスランの中の自分を深くしながら、くしゃくしゃになった藍色の髪をかき分けて、現れた、白い首筋にキスをする。
跡を付けると怒られるけど、ちょっと噛むくらいならかまわない。
だってアスランさん、ここ、大好きなんだもの。
「ーーーっ」
顔を真っ赤にして愛撫に耐えたアスランは、すぐに緑の瞳を潤ませたまま、シンを睨んだ。
「可愛いのは、お前だろ」
そうして、シンの頭をバカ力で掴み寄せて。
がっふりと、食べられてしまいそうなキスをくれた。
アスランは、キスも好きだ。
けど、こっちも、もっと好き。
「んっ、ふ、ぅ・・・・っ」
ちゅくちゅくと舌を吸い合いながら、淫らに絡み付いてくるそこを、深く、浅く突いてやれば。
それに合わせてアスランも、ゆらゆらと腰を揺らしてくれて。
気持ちのいい恋人の、気持ちのいい体を抱きながら。
気持ちのいい体温にくるまれて、気持ちのいい肌に触れて。
ああ、気持ちいいな。
このまんま、繋がってたいなぁ。
そう、思いながらも。
「あ、も、ごめん」
アスランの中のシンは、もう、ちょっと我慢の限界で。
「ん、んっ」
アスランも、こくこくと頷きながら、腰をすり寄せてくれるから。
シンも、アスランの一番奥に届くように。いっぱい、いっぱい。
「あ、あ・・・・っ」
「・・・・っく」
アスランも、いっぱい出して、とっても気持ちよかったって、体ぜんぶで教えてくれる。
「ん、ふ・・・・」
まだまだ気持ちよさそうに、とろけた瞳を空へ向ける恋人に、ちゅっ、とひとつキスをして。
名残惜しく中に入ったまま、シンはさっきの言葉を思い返した。
『いくつでも、俺が祝いたいから祝うんだ』
とっても、とっても勝手な、シンの恋人は。
それでも、とっても、とってもシンのことを愛してくれている。
それが一番嬉しくて、他には、なんにもいらないくらいなんだけど。
だけどシンの恋人は、このまま黙っていると、変なデザインの服だの、使いどころのわからない機械だの、ほとんどテロみたいなプレゼントをくれるから。
「ねえ、アスランさん」
「・・・・ん？」
とろん、とした、緑の瞳をのぞき込み、シンは思いついたプレゼントをねだってみた。
「俺の誕生日、一緒に海に行きましょう」
「ただ海に行くだけか？・・・ん、あれ？」
こてん、と小首を傾げたアスランは、やっとその瞳に理性の光を戻して。
「おまえの誕生日、平日だろう」
それでも、相変わらず的外れなことを言ってくれるから。
「だーかーらー」
呆れたシンは、そろそろまたＯＫになりそうな自分を、もちょっと奥まで入れながら。
「アンタを一日くださいって言ってんだ、よっ」
「んっ、・・・休みの日にすればいいじゃないか」
しどけない仕草でシンの首に腕を掛け、そのくせ、ごち、と額同士をぶつけ合わせてアスランは言った。
「祝いたいって言ったの、アンタだろ！」
ちょっとじんじんする額をぐりぐりと押しつければ、綺麗な瞳が間近で微笑った。
「・・・そうか。そうだな」
ちゅ、とキスをくれて、その唇で。
「誕生日、おめでとう、シン」
そう、『勝手に』祝ってくれる。
ほんとに、この人。
大好き。