炎の瞳
汗で滑る首筋を、無理矢理引き寄せて口づけを強請る。
敏感な指先で感じる、肌の感触が気持ちいい。
すぐに落ちてきた唇は、熱くて。
更に熱い舌が滑り込み、アスランを夢中にさせた。
「んん、んっ・・・」
キスをするのに、いったん腰が止まってしまうのはご愛敬。
むしろ、可愛くていいじゃないかとアスランは思う。
それを言うと、シンはむうっと怒る。
怒ったシンも可愛いけれど、なだめるのが面倒なので、とりあえずは黙っておくことにする。
それに、今は。
それどころじゃ、ないし。
ぷは、と、雰囲気台無しの息をついて、少年の唇が離れていく。
もっと、キス、したいのに。
そう思いながら、名残惜しく舌を伸ばして最後の一滴まで、透明な滴を味わう。
たくさんたくさんキスをしたから、唇が、赤い。
でも、シンは目の方が、ずっと、赤い。
赤あか燃える、炎の瞳。
ただでさえ熱のこもったその瞳に、熱く熱く見つめられると、アスランはもう、どうしようもなくなってしまう。
「シ、ン」
名前を呼ぶ。
長いキスで、舌っ足らずになった声がいとわしい。
ちゃんと、名前、読んであげたいのに。
でも、その呼びかけで、シンはにこお、と笑って。
アスランの、大好きな顔で笑って。
それからまた、一生懸命に腰を動かしだした。
正直なところ、シンの動きはつたない。
ただただ一途に、熱く絡みつくアスランの中を、行き来していく。
でも、それが。
「あ、あ・・・・っ」
それが、イイ。
とろりと潤んだはしたない襞を、少年の熱くて堅い物が、滅茶苦茶なリズムで突き上げていく。
感じる場所も、そうでもない場所も。
幾度もいくども、容赦なく擦りたてられる。
たまらず腰を跳ね上げれば、角度が変わってお互い呻いて。
「あんんっ」
「っ、わ、わっ」
痙攣したナカが、更に少年を締め付けて。
ぎゅう、と細い背中にしがみつくと、少年の鼓動と、汗の匂いをめいっぱいに感じてしまって。
そこで、情けない声が。
「待っ・・・イっちゃうかと思ったぁ」
耳元で、熱い吐息と共に吐き出されて。
「・・・・あ」
あまりの快感に身を震わせていたアスランは、それに気づいて呆然となった。
下腹のあたりに濡れた感触。
シンをくわえている場所の焦燥感はそう変わらないのに、切羽詰まっていた射精感は、なんだかすっきりしてしまっている。
はふはふはふと息をつき、建て直しを計っていたシンも、やっとそのことに気がついて。
「え、アスランさん、さっきのでイっちゃった？」
さっきの、が、何を指すのか、イったばかりで薄らぼんやりしたアスランの頭では、いまいちよくわからなかったのだけれど。
「俺巧くなった！？」
「そんなわけあるか」
年下の恋人のカン違いには、ほとんど反射で突っ込んでおいて。
「・・・・お前が」
そう言いさして、アスランはふと、むうっとむくれた赤い瞳を見上げて口を閉じた。
お前が、あんまり可愛いから、感じた。
それを言ったら、こいつはやっぱり怒るだろうか。
そう思うと、とたんになんだかおかしくなって。
「・・・っ、ははっ」
喘ぎにつぶれかけた喉から、途切れ途切れの笑い声が漏れた。
「な・・・・何なんですかアンタは！」
とたんにわめき出した、幼い恋人。
しかも、がばりとのしかかられたせいで角度が変わり、イきたての敏感な襞を思い切りえぐられて、ひとつ、息を飲んで。
「・・・・・っ、いや」
それでもアスランは、すでに涙目になっている、真っ赤な瞳を見上げた。
大好きな大好きな、赤あか燃える、炎の瞳を。
「愛してるよ」
お前の、可愛いところも格好いいところも情けないところもヘタクソなところも、全部。
「・・・それで、ごまかされると思わないでくださいよ」
そんな心中を知らないせいか、少しむくれたままのシンは、それでも嬉しさを隠しきれない声でそう呟いて。
「でも、ごまかされてあげます」
そう、嬉しそうに笑ってアスランを喜ばせた。
「・・・うん」
アスランがそう、あんまりあんまり嬉しそうに。
あんまりあんまり、綺麗に笑うから。
だからシンも、その絡みつく腕に引き寄せられるまま、抱きしめた大好きな体を愛することに没頭して。
腕の中の、恋人の。
熱い熱い、体に、溺れた。