ひとつのキス、いっぱいのキス
キスをする。
それから、ちょっと離して。
髪に触れて。
伸びてきた指に、指を絡めて。
また、キスをする。
さっきからたくさんキスをしているけれど、どのキスも、とってもとっても気持ちがいい。
アスランの誕生日は、一緒にご飯を食べに行って、それからベッドでいちゃいちゃすると決まっている。
シンの誕生日も似たようなものだけれど、その時にはアスランがあからさまにシンを甘やかそうとするものだから、やっぱりちょっと、凄く、違う。
だって今日は、俺がアスランさんを甘やかせてあげたいんだ。
俺が。
生まれてきて良かったって、この人に思わせてあげたいんだ。
そんな思いをいっぱい込めて。
たくさん、たくさんキスをする。
「ホントに、キス、巧くなったな」
キスの合間、そう言って軽く笑った唇に、たっぷりと乗った唾液を舐め取って、シンはむう、と口を尖らせた。
「巧くなったの、キスだけじゃないです」
アスランは凄く欲しがりで、キスだけじゃ満足してくれないから。
シンだってもう贅沢になってしまっていて、やっぱりキスだけじゃガマンできないから。
だから、ベッドでキスをするのだし、もっといっぱい他のこともするのだ。
「巧くなったとか自分で言うのか」
くすくすと笑ったアスランは、手を伸ばしてシンのシャツのボタンを外しにかかっている。
今日は、全部シンがやってあげたかったのに。
そう思いながら、シンも、アスランの服を脱がせながら。
「えー、巧くないですか？」
膨れてみれば、すぐに問い返されて唖然とした。
「え、巧いか？」
「ちょっ、アンタ！」
くすくすと笑ったアスランは、そんなシンにまた、キスをして。
「巧いかどうかは置いといて」
置いとくなよそれ！と騒ぐシンの服を脱がし切り、そうしてきゅう、と抱きしめてくれた。
「気持ちいいよ」
そうすれば、シンもぎゅっと抱き返して。
大好きな、いい匂いのする肌を、体全部でいっぱいに感じて。
それから、首に、肩に、指に、腕に。
胸に、おなかに、それからちょっと考えて、ずーっと降りて、足先に。
キスをする順番は、いつも同じじゃないけれど、いつだって、どうやったらアスランが気持ちいいか、シンは凄く考えてる。
いきなり変なとこ触ると、ぶっ飛ばされるのもあるけれど。
だって、大事なアスランだもの。やっぱり、気持ちよくしてあげたい。
「ん、シン・・・」
アスランの目が、とろんとシンを映して。
声が甘くなってきたら、もう、大丈夫。
ちょっと立ち上がってるそれにもキスをして、それからシンは、その後ろにもキスをする。
「っ、こら」
そんなことを言いながら、アスランも脚を開いてくれるから、もっと、たくさんキスを・・・
「だから、そこ舐めるな！」
・・・させてくれなくて、諦める。
ちぇ。
がし、と頭を掴まれて、ぐいぐい押しやられて。
もう片方の手で掴み取った、ローションのボトルで殴られた。
底の縁が見事に当たって、ちょっと、とっても痛かった。
「わかってますよ・・・」
「わかってるなら何度もやるな！」
ちぇー
一回、好きなだけ舐めたいなぁと思いつつ、でも今日はアスランの誕生日だし。
わざわざ怒らせることもないので、今日は・・・今日も、言うことを聞いてあげることにする。
ローションでたっぷり濡らした指を、やっぱりたっぷり濡らしたそこに押し当てれば、ぬるん、とすぐに飲み込んで。
入り口はきゅうっと食い締めてくるくせに、中はやわやわ包んできて、シンは早く入れたくてたまらなくなる。
でも、ガマン、ガマン。
きっと、すぐに入れてもアスランの体は飲み込んでしまうだろうけれど、でも、そしたらきっと、とっても痛い。
だから、ガマン。
それだというのに。
「シン、もう、いい」
「え、いいって」
ぬる、と指を抜き出して、今度はぐーっと根本まで押し込んでみる。
きっつきつの入り口に、擦られた指が気持ちいい。
「いい、って、言ってるだろ」
でも、もっと気持ちいいことなんて、シンはたくさん知っている。
赤く染まった目元でもって、睨んでくるアスランは、とってもとっても色っぽくて。
シンはごくんと生唾を飲み込んだ。
「でも、きっとまだ痛いよ」
「だから、いいって」
そう言うと、アスランはシンに腕を伸ばして。
わぁまた殴られる、とすくめられたシンの首に、それを絡みつけて。
そうして、きゅう、と抱きついてきてから、囁いた。
「焦らすな、ばかやろう」
うわー、うわー、うわー
指を突っ込んだままの中も、きゅう、とシンに絡みつく。
うわー
ちょっとだけ顔を離してアスランを見れば、緑の瞳が触れそうな距離で瞬いて、それから近づきすぎて見えなくなった。
アスランからのキス。
気持ちいい。
うっわー
キスをしながら、ゆっくりと、アスランの中の指を動かす。
「んふ・・・」
息を継いだアスランが、甘く喘いでシンの頭を白くした。
「・・・わかりました」
気持ちいいキスの最後にそう答えれば、アスランは満足そうに頷いて。
でも、押し倒し直して綺麗な脚を抱えたら、なんだか真っ赤になって向こうを向いてしまった。
こういうとこ、可愛いんだよな。
綺麗で可愛くて、エロくてちょっと乱暴者。
アスランさん、大好き。
そう思いながら。
シンは、ガマンしていたものを、ゆっくりゆっくり、アスランの中に入れてあげる。
「っ、ふ・・・・ぅン」
上がった声は甘かったけれど、心配になって聞いてみる。
「アスランさん、痛い？」
「ん・・・・平気だ」
ちょっとだけ涙目のアスランは、そう言って微笑って。
それからまた、キスをくれた。
それが気持ちよくて。
繋がった場所も気持ちよくて。
シンは、アスランを気持ちよくさせてあげなきゃと、一生懸命動き出した。
熱い粘膜がシンのものを包んでイかせようとするけれど、やっぱりちょっとガマンして。
「ん、ん、ん、ふ、あ・・・・っ」
気持ちよさそうなアスランの声を聞きながら、気持ちいいのをガマンする。
だって、ここをガマンすれば、二人とも、もっと気持ちよくなれることを知っているから。
でも、だんだんガマンが利かなくなって。
アスランの中も、きゅうきゅうしてるのがうごうごでぐにぐにで、えーっと、とにかくイきそうな感じになってきて。
「シン、シン・・・っ」
何よりも、甘くせっぱ詰まった声で、シンのことを呼んでくれるから。
「アスランさんっ」
シンはもう、ガマンをやめて、アスランの中に出してしまった。
アスランも、もちろん。
もの凄く気持ちよさそうにイってくれて、嬉しかった。
「誕生日、おめでとうございます、アスランさん」
今日、何度目かの言祝ぎに、アスランはゆるゆると微笑った。
「・・・ああ」
その笑顔がなんだか切なくて、シンはぎゅーっとアスランに抱きついた。
互いの素肌が触れ合うと、なんだかもっとしたくなって、困る。
ぎゅうぎゅうしがみついてくるシンを抱き返してやりながら。
好き放題に跳ねた髪にキスしてやりながら、アスランは思った。
このまま。
ニコルやラスティを置いて来てしまった俺は。
ミゲルの年を追い越して、ハイネの年を追い越して。
隊長を追い越して、やがて、母や父を追い越して。
どこまで追い越してから、逝くのだろうか。
シンの手が伸びて、髪をかき回してくる。
それからキスをして、とさ、と、またベッドに倒された。
あんまり先へは行きたくないんだ。
あんまり、先へは。
それだというのに。
「アスランさん」
シンは、なんだか真剣な顔をして、アスランをのぞき込んでいた。
「俺、アンタと、ずっと一緒に行きたいです」
真っ赤な瞳がきらきらしていて、とってもとっても綺麗だった。
「ずっと、一緒に、生きたいです」
「・・・そうか」
アスランはシンを引き寄せて。
そうして、やさしくキスをした。
望むことは、許されるだろうか。
どこまでも、一緒に。
この先へ。
ずっと、と。
「俺も、だよ」
少し離した唇で、囁くように言ってやると、シンは、にこーっと笑って。
そうして、がふりとキスをした。
食べられてしまいそうなキスに応えてやりながら。
続きがしたくてたまらない愛撫に応えてやりながら。
これからも、ずっと。
このキスが欲しいと、アスランは思った。