はじめての夜
始まりは、いきなりプロポーズだった。
「俺と、結婚してください」
「は？」
いきなり過ぎて、アスランは何も言えないまま、ぽかんと口を開けてしまった。
「は、じゃないです。返事もらえませんかっ」
「いや、その」
返事と言われても。
「なんで結婚なんだ」
決闘じゃなくて？
「あんたが好きだからです！」
そう言った少年の顔は、真っ赤だ。
どうやら冗談ではないらしいが。
「なんで・・・」
アスランには、なんだかまったくわからない。
「なんでって」
シンは、そこで戸惑ったように、いったん口をつぐんで。
「わかんないですよ。あんたなんか煩くって偉そうでムカついて・・・」
そうぶつぶつと呟いた後。
「でも好きだって思っちゃったんだから仕方ないでしょう！」
そう、大きく吠えた。
「・・・俺は男だが」
「知ってますよそんなこと。・・・あー、ムカつくなぁっ」
いや、そんなことでムカつかれても。
「で、どうなんですか！？」
ぐいっと迫る、少年の赤い瞳。
実はそれが、アスランはかなり好きだったので。
「・・・とりあえず、いきなり結婚じゃなくてだな・・・・・・」
まあ、彼のことは、多分かなり気に入っていたので。
「とりあえず、もう少し手前から始めてみないか？」
そんなふうに付き合いだした二人は、それでもたまに甘い雰囲気になったりもして。
そっと抱き合うこともあったし。
弾みで、キスしたこともあった。
それも、アスランの脱走と、ディスティニーによるグフ撃墜で終わったのだけれど。
終わったと。
もう二度と、触れ合うことなどないのだと、二人とも、思ったのだけれど。
何故か今、二人は顔を突き合わせて、とりあえず与えられたモルゲンレーテの宿舎で、部屋割りなぞをしていた。
「だから、２ＬＤＫなんだから一部屋づつでいいだろう？広い方使っていいぞ、お前」
「嫌です。広い方寝室にして、こっちはアンタが仕事で使えばいいだろ」
「そういうわけにもいかないだろう・・・」
月面での決戦後、回収してきたシンは、気が付いたら何故かオーブまで付いてきてしまっていた。
いや、気が付いたらというのは嘘で。
アスランは、ずっとシンに聞けずにいたのだ。
どこまで、ついて来るのかと。
いつまで一緒にいられるのかと。
そうこうしているうちに、よく言えば寛容、悪く言えばいい加減なオーブやクライン派の連中は（アスランは知っている。先の大戦も今回も、ＡＡとクライン派が最強を誇ったのは、この「付いてくるのはみんな味方」的な発想のせいだ）、すっかりシンとアスランをセットとみなし、こうして同じ宿舎に放り込まれるに至っているのだ。
「だいたい家具付きだぞ、ここ。ベッド運ぶの面倒だろう」
「ベッドなんか一個でいいですよ！俺たち恋人同士でしょう！！」
怒鳴ったシンに。
アスランは、目を瞬かせた。
「まだ付き合ってたのか？俺たち」
「アンタって人はーーーっ！」
シンにぽかぽかと殴られて、それを片手でぐいぐいと押し留めて（リーチの差だ）アスランは、どこか信じられない思いで、一応、もう一度確認する。
「答えてくれ。まだ、付き合ってたのか？」
「そりゃあアンタの乗ってた機体落としたの俺ですけど！大怪我だったって聞きましたけど！！俺も、あれで終わったって、終わっちゃったって思いましたけど、でも！！」
アスランは、黙ってシンの言葉を待った。
「でも俺、アンタにフラれた覚えだけはないし、フッた覚えなんかもちろんないし！なら、俺たちまだ付き合ってますよね！！」
「・・・凄い理屈だな」
仕方なさそうに。
ふうっと笑ったアスランが、キレイで。
やっぱり、シンはこの人大好きで。
「なんですか、フる気ですか！？」
グルグルと唸りながら、でもフられる覚悟なんかまったくなしに、シンは縋るようにして、アスランを見上げた。
「いや」
そう言ってもらえて、もの凄くほっとした。
「なら、良かったよ」
そう言われて、泣きたくなった。
「しかし、部屋はな・・・」
「だからダメですってば！寝室ひとつ！ベッドひとつ！！」
とにかく怒鳴り散らして押し切る戦法に出ようとしたシンは、しかし途中で固まって。
真っ赤になった、アスランの頬の色味に見入ってしまう。
「え、アンタ・・・」
この反応は、知ってる。
不意に振り向いたこの人が、あんまりキレイだったから。思わずキスしちゃった時と、同じ。
「アスランさん照れてる？てか、ハズカシイんだ！」
「そんなんじゃない」
「だってアンタ顔赤いよ」
「・・・・赤くない」
「自分じゃわかんないでしょう」
「いや、それはそうだが・・・・」
ぶんぶんと尻尾を振るように、覗き込もうとするシンから目を逸らしながら、アスランはぐるぐると頭をめぐらせていた。
しかし、なにせぐるぐるなので、めぐっているようでめぐっていない。
だって、ベッドが一つということは。
多分、シンはそういうコトを期待しているということで。
確かに自分たちは付き合っていたけれど、唇が触れるほどのキス止まりだったのだ。
それが何故に、いきなり同居でベッドが一つ？
いや、それって。
同居じゃなくて、同棲？
「アスランさんっ！」
やっと思考がそこに行き着いたところで、真っ赤な瞳に睨まれて、アスランはびくりと身を竦ませた。
「いいでしょう、俺たち恋人でしょう！？」
「シ、ン。それは・・・」
おろおろと視線を彷徨わせ、その強い瞳から、なんとか逃れようとするアスランの首をがっちりと捕まえ、シンは。
「恋人でダメなら！結婚してください！！」
再度、激しくプロポーズした。
「何回だって言いますけど、俺、アンタと家族になりたいんです。ずっと一緒に居たいんです。くっついて寝たいですセックスだってしたいですもうっ！」
そこで、言葉を切って。
いや、息切れしたのだろう。大きく息を吸って。
「もう、アンタどっか行っちゃわないでください。目ぇ覚めた時、一番近くにいてくださいっ！」
半泣きになった少年の、あたたかな体を思わず抱き寄せて。
アスランは、思い切り自分を恥じていた。
そう、シンは、はじめから結婚してくれと言っていたのだ。
家族になって欲しいと言っていたのだ。
その、一部分だけ摘み取って、恥ずかしがっていた自分こそ、恥ずかしい。
「・・・わかったよ」
答えて。
それからアスランは、縋るように見上げた少年の、わずかに濡れた眦に口付けた。
「結婚しよう、シン」
とたん、ぱあっと笑顔になった少年が、可愛くて、愛しくて。
「じゃあ、ベッド一つでいいですね！！」
でも、そのセリフに、ちょっと早まったかなと思ったのだけれど。
シンがあんまりにも幸せそうなので、まあ、いいかと思うことにしたのだった。
作り付けのベッドは、思ったよりも狭かった。
男二人で乗りあがっていれば、当たり前だ。
「大きいの買いません？」
「お前が買え」
「う・・・はーい」
一応素直に頷いて、それからシンは、そっと側の恋人・・・いや、家族に、キスをした。
「シ・・・ン」
「ダメですか？」
きゅうん、と、今にも鼻でも鳴らしそうなシンの様子に、アスランはうっと言葉に詰まる。
「いや、駄目なわけじゃないんだが」
でも、その、あの。
「俺は初めてなんだ・・・・」
お前は？
「俺も初めてですけど」
ちょっと、二人、黙って。
「大丈夫です！俺、いろいろ勉強して、準備もばっちりですから！」
準備ってナニ！？
心の準備からして出来ていないアスランは、そこでまずびびってしまう。
でも、シンがなんだか一生懸命で、可愛かったので。
とにかく、覚悟だけは決めることにした。
「アスランさん、こっち向いて」
下を向き、拳を握り締めて覚悟を決めていたアスランに、シンは不機嫌そうに囁いて、その白い頬に指を触れさせ、それからちゅっとキスをした。
「だから、どっか行っちゃわないで下さいってば」
いや、行ってたわけじゃなくて、覚悟を決めていたんだ。
しかしそうも言えずに、アスランは慌てて頷いた。
「すまない・・・あ、脱ぐか？」
急に積極的になったアスランに、今度はシンがびっくりして。
「えっ、あっ、俺が脱がせていいですか？」
「あ、ああ・・・・」
シンはドキドキしながら、アスランのパジャマに指をかける。
後はもう寝るだけだから、二人とも簡単な寝巻きを着けただけだ。
あらわれた肌からは、まだ、かすかに湯の香がする。
「アスランさん、いい匂い・・・」
「匂いって、お前・・・」
白い頬が、こんなにも赤くなった。可愛い。
その頬に、また、ちゅっとキスをして。
それからシンは、その唇を下へ。
曝したばかりの白い胸へ。
「い、あ・・・・」
触れただけで、そこもまた、ピンクに染まる。可愛い、キレイ。
ダイスキ、アスラン。
「下も下も」
「お前、そんな急に・・・・」
アスランの体が一瞬逃げを打って、しかし狭いベッドなものだから、そのままゴン、とベッドの背に、背中をぶつけて。
「痛って・・・」
「うわ、ごめんなさい。てか俺が悪いんですか？逃げたアンタじゃなくて？」
「悪いとは言ってないだろ・・・」
ため息をついたアスランは、自分からずるずると下を脱いだ。
シンがぽかんとしているうちに、少しためらったけれど、下着まで。
上を脱がされてようくわかった。脱がされるって、なんだかとってもハズカシイ。
「えっ、あっ、うわっ」
怒るだろうかと思ったシンは、しかし真っ赤になってうろたえて。
「アンタ、いやらしー・・・」
目は、もうアスランの下肢に釘付けだ。
「っ、それはお前がっ！だいたいなんでお前は着てるんだ。脱げ！！」
アスランに掴みかかられて、シンも慌ててばっさりとトレーナー型のパジャマを脱いだ。
「・・・・お前、最近妙に育ってきたよな」
停戦直後は、確かにアスランの方がタテもヨコも大きかったのに、今、シンの胸板は、確かにアスランのものに近づきつつある。
「え、ホントですか？」
ニッカリと、本当に嬉しそうに笑った少年の、男っぽさの増した目元なんかに、ドキドキする。
最近、アスランが自分って変態かもと、時々思う瞬間だ。
「ああ。・・・」
赤くなってうつむくさまを、一体どう思ったのか。勢いよく下も脱ぎ捨てたシンは、がばあっとアスランに抱きついた。
その勢いで、今度は頭が棚にぶつかる。
「いっ・・・このバカ！」
今度はシンもぶっとばされた。
「・・・ゴメンなさい」
はじめてって、タイヘン。
「今度やったらあっちの部屋で寝るからな、俺は！」
そうきっちりと宣言されて、シンは情けない顔で、上からガミガミと怒るアスランを見上げる。
「だって・・・俺、はじめてで・・・・・」
「だから俺もはじめてだって言ってるだろ！」
言い合って、二人して赤くなる。
「・・・だから、気をつけろと。そう言っているんだ・・・・・」
「はい」
ああもう、なんてこの人可愛いんだ。
気を取り直して、もう一度、キスから。
暴れたせいか、さっきよりももっと熱い気がする体中に、キス。
「っ、シン、お前・・・」
「なんです？」
本当にはじめてか？そのセリフを飲み込んで、アスランはなんでもない、と首を振った。
だって。
シンの手は、気持ちよくて。
シンの唇は、気持ちよくて。
「あ・・・・」
ついっ、と感じ始めてしまった欲望に触れられて、息を飲んで。
シンの赤い瞳が、恐る恐る自分を窺っているのが横目に見えて、アスランは、それから一生懸命目を逸らす。
もちろん、触れられているソレにも、視線はやらない。
見てしまったらアウト。
そんな気がする。
それなのに。
目を逸らし、シーツを掴んだのを是と取ったのだろう少年は、ソレにするすると指を這わせて。
アスランを、気持ちよくさせて。
挙句に。
「・・・アスランさんって、もしかして、あんまり自分でしたりとかしないタイプ？」
「〜〜〜〜おまっ、何を・・・」
「だって、すっごく感じやすくって。ピンクでキレイだし」
まったくもってその通りなのだが、口に出して言われるのも恥ずかしくて。何か言い返してやろうと顔を上げたアスランは、しかしそこでまた、固まった。
丁度、シンが口を開けて、ソレに食いつこうとしていたところだったから。
「んぐ」
「―――――――っ！！」
いきなり、たっぷりと包み込まれた熱い粘膜。
ぬるりと触れた、コレは、舌？
「っっ、あ・・・・」
とたん、放ってしまったチェリーボーイを、一体誰が責められるだろう。
「うわ、アスランさん早・・・」
「うるさい！」
げんっ、と蹴り飛ばされたシンは、危ういところでベッドの端にかじり付いた。
シーツがよれて、シンの代わりに丸めてあった毛布が落ちる。
「蹴んないで下さいよ・・・ホントのことでしょう」
ぼやくシンは、すぐさまイタズラっぽい表情になった。
そして、シンを蹴って投げ出されたままだった脚を、ぎゅうっと、掴んだ。
「っ！」
アスランが、自分の失態に気付いた時には、もう遅い。
シンはその脚を掴み上げ、バランスを崩したアスランの、脚の間を派手に曝す。
「こらシンっ・・・・」
「アスランさん、そのカッコやらしい、可愛い」
「やらしいって、おま・・・」
言いかけたアスランは、何度もぶつかったベッドの背に作りつけられた棚から、シンが歯磨き粉ほどの大きさのチューブを引っ張り出したのを見て、口を閉じた。
「シン、それは」
一体何？
「潤滑ゼリー買って来たんです。そのままするより、アスランさん楽ですよ」
楽って。
ラクって。
自分たちが何をしようとしているのか、なんだかリアルになってきて、アスランの覚悟がぐらぐらと揺らいできた。
「シン、それは、もしかして・・・」
聞かなくてもだいたいわかるけれど、ついうっかり口に出してしまったアスランに。
「アンタのソコに塗るんです。あ、俺のにも塗っとこ」
きちんと答えられて。
ソコを凝視する視線に、更に羞恥を誘われて。
「シン、あのな、やっぱり・・・・」
「やめたとか言わないで下さいよ。俺すっげー楽しみにしてたんだから！」
シンにきっぱりとそう言われれば、アスランはもう黙るしかない。
「大丈夫ですよ。悦くしてあげます！」
「よくって・・・何がどう・・・・」
思わず呟いたアスランの声を聞き洩らさず、シンはチューブから透明なゼリーを搾り出しながら、真顔できっちりはっきり答えた。
「ココで、気持ちよくしてあげます」
そうして、それをぺとりとアスランの秘所になすりつけた。
「ひあっ」
「あ、もしかして冷たかったですか？あっためた方がいいかな・・・」
「冷たいとか、そうい・・・・うぁっ」
びくんと跳ねたアスランの腰。
シンだってはじめてなのだ。
相手に動かれれば、指だって滑る。
つぷ、と、前触れもなしにゼリーに濡れた指を突っ込まれてしまい、アスランは思わず声を上げてしまった。
「うっわ、アスランさんの中あったかい。きもちいー」
「ゃっ・・・・抜けって・・・・」
「嫌ですよ。せっかく入ったのに・・・えっと、ココとかどう？」
「いっ、やっ」
「嫌ですか？あれ？」
そう言いながら、シンの指が探り当てたのは、ばっちりアスランの前立腺だった。
「やっ、あっ、ああっ」
「なんか、アスランさん気持ちよさそうなんですけど・・・・・・・」
「知るかっ、あっ」
そう言うアスランは、なんだかもう涙目で。ほっぺた真っ赤で、寄せられた眉なんか切なげで、上がる声は艶やかで。
「スゴ・・・色っぽ・・・・」
シンは見入ってしまうのだけれど。
「あ・・・・っ」
アスランは、それどころではない。
「やっ、ああっ」
自分の、みっともない（と本人は思っている）声と格好に、そうしてそれをシンに曝してしまっていることに、いい加減もう泣きそうだ。
「シン、もう嫌だ・・・」
「嫌？ホントに？気持ちよくない？？」
「あんっ・・・」
いつの間にか増やされていた指で、ぐいぐいと感じるところを刺激され、アスランはまた恥ずかしい声を上げてしまった。
ほんとに、もう嫌だ。
何とかして欲しい。
その何とかが何なのか、アスランにはよくわからないのだけれど。
「アスランさんもういい？俺、もう我慢できない・・・・」
いつもよりかすれた、シンの声。
我慢できないのはアスランの方だ。
「やっ、やっ、あっ・・・・・」
思わず、ぎゅーっとシンにしがみ付いてしまったのを、シンはどう取ったのか。
掴み上げていたしなやかな脚を、もっと深く抱え上げて。
ふるふる震えている腰を、その熱い手で抱き上げて。
「アスランさん・・・・」
「うぁ・・・・っ」
ずる、と、何かが自分の中に入ってくる感覚。
さっきの指の比じゃなくて。
もっと大きくて。
熱い。
「シン・・・っ、シンっ！」
それは、間違いなくシンだった。
アスランの、新しい家族で。
凄く、大好きな子で。
彼にいっぱいにされる、その快は、初めて押し開かれる痛みよりも、ずっと深くて。
「あ・・・ああっ・・・・シン・・・・っ」
「アスランさん・・・スゴイ・・・きもちいい・・・・」
初めて感じる、大好きなヒトの中。
それは、シンに初めての快楽をもたらして。
熱く包む肉のキツさ。
しがみ付く腕の、熱さ強さ。
シンでいっぱいのその表情。
何より、自分を呼んでくれる声。
ヤバイ、スゴイ、キモチイイ。
「アスランさん、アスランさんっ・・・」
「んっ、あっ、シ・・・・ンっ」
ぎゅうぎゅうと抱きしめ合って。
腰を必死にすり寄せ合って。
初めて溺れる互いの体に、その夜、二人は夢中になった。
「ねえ、名前とかどうします？てか、オーブって同性婚できたっけ？」
「そんなこと知るか・・・名前は、お前のでいいよ。どうせ俺は、公的な書類なんかは偽名なんだから」
「え、じゃなに、アスラン・アスカ？なんか語呂悪いですね」
「だから偽名使ってるって言ってるだろう。アレックス。アレックス・アスカか。まだこっちの方がマシだな」
「えー、アスランさんのがいい」
「なんだそれは」
ベッドが狭いものだから、ぎゅうぎゅうに身を寄せ合って。
これからのことを、話し合う。
「ベッド、このまんまで良くないですか？くっついて寝れるし」
「そうだな・・・嫌な時にはあっちの部屋に逃げられるしな・・・・」
「うわひでえ、アンタ逃げる気ですか！」
「毎日この勢いじゃ、たまらないぞ」
「毎日は我慢しときますから。時々でいいんでヤらせてください」
「う・・・」
あまりに明け透けな言いように、ぱふっと枕に顔を埋めてしまったアスランを、シンはぎゅーっと抱きしめた。
しっとりと汗を含んだ髪に。その先端の散る首筋に。何度も何度も口付けて。
「指輪は3か月待ってください。テストパイロットの仕事、たぶん受かったんで。ちゃんと3か月分で買ってきます」
「その間の生活費はどうするんだ。俺に全部持たせる気か？」
「うぇ・・・・ローン組もっかな・・・・」
うーうー唸る少年にくすりと笑ったアスランは、そのまま少し顔を上げて。
翠の瞳を、ちらりときらめかせて。
「形なんか、ゆっくりでいい。・・・俺たちはもう、家族だろう？」
そう言うと、わずかに顎を上げてくれるから。
「はいっ、じゃあゆっくり貯めます！」
「そうしてくれ」
抱き合って、キスをして。
出来たてほやほやの家族は、幸せな眠りについたのだった。
Congratulations!