抱きしめる。
「あ、は・・・」
腰をよじり、大きく喘いだアスランは、しがみ付いた少年の背中に爪を立てて、それから慌ててその手を握り締めた。
体の中をずくずくと穿つシンの雄から、必死になって、ほんの一時気を逸らし。
そうして、恋人を抱き潰してしまいそうな腕の力を、なんとか少し緩めて。
しかしすぐに深く突き上げられて、高い声を上げながら、再びきつく爪を立てる。
「ぁんっ、シンっ・・・・」
アスランよりも細い体で、アスランを組み敷く少年は、掴んだ腰をいっそう強く引き寄せて穿ちながら、低い声で唸ってみせた。
「他のこと、考えちゃダメだ」
「やっ、違・・・・ぅ」
違う。
今のアスランは、シンのことでいっぱいで。
体の中も外も、精神（こころ）の中まで、全部、シンのことしかない。
気を逸らしたのも、やっぱり、シンのことなのに。
そう言おうとして、しかし体の中の一番敏感なところを容赦なく攻め立てられて、アスランはそれこそ、何も考えられなくなった。
体の中の、シンのこと以外、何も。
「やぁっ・・・っ、あ、ああっ・・・・」
バカ力だと、よくよく評されるアスランの力で、腕の中の華奢な肩が、ぎしぎしときしむ音がする。
感じ過ぎ、締め過ぎる体にきゅうきゅうと絞られる痛みに、穿つ少年が苦しげに呻く。
そうして、すぐさま負けるもんかと唇を噛んで、挑んで、くる。
しかし、体の中のシン以外、何もなくなったアスランは、そんなことにはもう、全く気が付かなくて。
「あっ、やっ・・・シン、シンっ・・・・・・！！」
ただ少年の名を呼んで、彼の与える暴虐に酔い、自ら腰を振ってそれを求めて。
腕の中の背中に、抱き潰す力でしがみ付く。
「ああっ・・・」
やがて、中を濡らした精の熱さに感じて。
少年の腹に擦り付けていたものを、ふるふると震わせて、自分も熱く凝っていたものを吐き出した。
はぁはぁという荒い息と、互いの鼓動が、繋がったままの体に響く。
その愛おしさに、アスランは抱いたままの少年のくしゃくしゃの髪に頬を寄せた。
濃い汗の匂いに、思わずため息が洩れる。
「シ、ン・・・・」
それに紛れて出た声の、啼き疲れてかすれた響きに、少年の体が反応した。
「そんな声、出すなよ、あんた」
ずく、と内を押し拡げる少年の大きさが増し、アスランは感じるままに、小さく声を洩らした。
顔を上げるシンが、腕の中からするりと抜け出していくのを、酷く惜しく感じながら腕を離す。
そうして、今度は自分から手を伸ばしたシンに、頬や胸をべたべたと弄られる心地よさに酔いながら、快楽にぼやけた頭で、やっと一言、言い返した。
「そんな、声、て。おまえ、の・・・・・」
シンの声の方が、よほどアスランの官能を掻き立てるのに。
しかし、それを言い切る前に、ずるりと内から抜き出されて、アスランはくっと息を詰めた。
思わず閉じた目を開けると、自分を見下ろしていた少年の、赤い瞳が遠ざかっていく。
そうして代わりに、しどけなく開かれて、恋人の腰に意地汚く巻きつけられた、自分の脚が見えてしまった。
不意に湧き上がった羞恥に目を逸らすと、今度は、少年の骨ばった指が自分の腰を抱き直し、今の今まで好き放題荒らしていた場所に触れ、こじ開けようと蠢きだしたのを感じてしまった。
そこは散々開かれ、擦られて。挙句に精を注がれて、まるで女性の性器のように、濡れて開いて震えている。
そこに、少年の指が押し込まれ、具合を確かめるように散々に弄り回して。
準備をしている時とは違う、興味本位のその動きに居たたまれなくなり、アスランはシーツに落ちていた手を上げて、知らず涙の零れていた目元を覆った。
そんな仕草が、益々雄を誘うとも知らずに。
「何やってんですか。顔、見えない」
残酷な少年は、それを無理やり引き剥がし、たっぷりと潤んだ翠の瞳に、思わずひとつ、息を飲んだ。
「すげ・・・やらしい顔・・・・」
「何、が・・・・」
その、やらしい顔がくしゃりと歪んで、ますますいやらしくなるさまに、年若い少年はたまらなくなる。
「ねえ、このまんましてもいいですよね」
その言葉に、アスランの背筋が震えた。
「ま、て。少し、休っ・・・・」
「やだ、我慢できない」
もともと、我慢する気などないのだろう。
シンは、紅く熟れてまだとろりと開いているそこから、指を離して。
抵抗する力など、とうに失っていたアスランのそこへ、再び兆した自分を、深く深く突き立てた。
「やっ、ああん・・・っ！」
きゅっと目を閉じられたアスランの目元が、さっきよりももっと、ずっと、いやらしく紅く染まっていく。
ふるふると首を振るたびに、シーツに散る髪の艶やかさ。
シンの腰を抱いた脚が、ひくひくと震えるさまも、たまらなく淫らで。
「すげー、気持ちいい・・・ぐちゃぐちゃだ」
シンの正直な感想に、アスランは腰を震わせた。
「お前、が、中で出・・・・っ」
「うん。・・・また出していい？」
「あっ・・・！」
たっぷりと濡れたそこは、シンを一息に根元まで飲み込んでしまい、あまりの刺激に一瞬、我を失ったアスランは、それでもなんとか自分を保ち。
「いい。・・・から、シン」
そう言った恋人が、ふるふると震える腕を、それでも力いっぱい伸ばしたことに気が付いて。
シンは嬉しげに笑い、長い腕に導かれるように、その人の胸に身を倒した。
繋がった場所ももちろん気持ちいいけれど、痛いほどの力で抱きしめてくれる腕も、寂しかった少年には、どうしようもなく、気持ちいい。
大好きな恋人を、いっぱいに抱きしめて。
体の芯の奥深く、いっぱいいっぱい開かれて。
「あぁ」
聞く者までがうっとりするような、幸福なため息を洩らしたアスランに、その恋人の少年は、喜び勇んで挑みかかる。
「あ、あっ、は、ああっ・・・！」
「・・・・もっと、抱きついちゃってくださいよ。俺、潰れちゃうほど弱くない」
そう囁かれた言葉に、喘ぎ続けるアスランは、気付いたかどうか。
それでもアスランは、シンの背中を抱きしめる。
万感の想いと、少しばかり強すぎる力を込めて。
快楽に流されるその一瞬、彼の胸にあったものは。
ただ、この幼い恋人への、愛おしさだけ、だった。