あったかくて、気持ちよくて。
目が覚めると、なんだかとってもあったかいところにいた。
あんまり気持ちよくて、起きるのがもったいなくて、銀次はちいさく唸って毛布にしがみついた。
「・・・・・」
毛布だと思ったそれが、あんまりあったかくて気持ちいいので、それをぎゅうっと抱きしめて、額をつけてぐりぐりした。硬過ぎず、柔らか過ぎず。それがほんとに気持ちよくていい匂いまでするので、起きなくちゃいけないのにもっと眠たくなった。
「うーーー」
今度の唸り声は、だいぶ大きなものだったんだろう。
くすくすと、頭の上で笑い声がした。
「ふぇ・・・・」
その声も気持ちよかったけど、さすがに不思議になって重たいまぶたを開けた。
「おはようございます、銀次さん」
最初にぼんやり見えたのは滑らかな肩のラインで、少し頭を上げると紅い唇が見えた。
それにいっぱいキスしたのを思い出して、やっとのことで銀次は昨夜のことを思い出したのだった。
今も自分の背に回っているしなやかな腕が、きつい力で絡みついて。
熱い唇、熱い肌。・・・熱い、ナカ。
オレ、カヅっちゃんと・・・・
シたのは実は初めてで、朝起きてカオを見て、なんて言ったらいいかなんてわからない。
ただただ、カヅっちゃんのあったかい腕が気持ちよくって、きのうあんなコトいっぱいしちゃったのがハズカシくって。
「お、はよ・・・・・」
やっとそれだけ言うと、花月はまた、くすくす笑ってキスしてくれた。
このキレイな人が、よくビッチとかインランとか、陰で言われているのを銀次は知っていた。そして、十兵衛とか柾とか、ほんとにいろんな人としているのも。
それでも、花月の腕があったかくて気持ちいいから、ぜんぜんかまわないと思った。
「銀次さん・・・？」
起きる気配もなく、きゅう、と自分にしがみついてきた少年の金色の髪に、少し身を起こした花月が、またキスを落とし、優しく抱く。
甘やかされているのはわかっていたけれど、こんなふうに甘やかしてもらうなんて覚えがなかった銀次は、この腕を放したくなかった。
雷をその身に呼び寄せる自分を、こんなふうに抱いて、受け入れてくれる人なんていなかったし、いても、怖くて近寄れなかった。
もちろん、傷つけるのは、今でも怖いけれど。
それでも花月が差し伸べてくれた腕はあったかくて気持ちよくって・・・
銀次はまた、眠たくなった。
「ダメですよ、銀次さん」
なのに、その腕の主が、優しく銀次を揺り起こす。
「ん〜〜〜〜」
仕方なしに、気持ちいいぬくもりから離れて、ベッドの下に落ちていたシャツを羽織る。
少し大きなそれは花月のシャツだったけれど、返そうかと振り向いたその人が、まだしどけなく身を横たえたままだったので、銀次は少し不満になった。
「カヅっちゃんは？」
「起きられませんよ。誰のせいですか」
言葉ほどには責めのない口調で答えて、花月は手を伸ばし、銀次の着た自分のシャツのボタンを留めてくれた。
じゃあこれ、今日着ててもいいってことなのかな。
銀次は嬉しくなった。
嬉しくなって、もう一度あったかい腕にしがみついて、ぎゅうってして、キスをして。
それから、急いでズボンを穿いて、仲間のところへ走っていった。
花月の、切ない眼差しには、振り返らずに。
恋も愛も、ぜんぜん関係ないこの場所で、こんなことに心を痛める愚かさを。
雷帝は、本能で知っているかのようだった。