甘い肉
シンの、気になってしかたのなかった上司は、シンをあたためてくれる、甘い、やわらかな肉になった。
「俺もあっためてほしかったんだ。お互い様だろ」
してしまってから慌てたシンに、その人は、そう笑ってくれた。
そうして二人、時々、あたため合う関係は続いている。
寂しくて、仕方のないシンは。
その人の体に、たくさんたくさん慰めてもらった。
そうして。
慰めてくれる、その人の体は、必要不可欠なものになっていた。
「んっ・・・あ、はぁ・・・・・」
シンの下で、しなやかな体をのたうたせて、シンの上司が喘ぐ。
いや。
今、この人は上司じゃない。
隊長じゃ、ない。
「アスラン、さん・・・」
呼べば、シーツを掴んでいた指が、そこを離れて。
やわらかな熱を放つ腕が、するりとシンの背中を抱いた。
シンよりも、随分と長い腕。それが、ぎゅっと強い力でシンを引き寄せ、そうして押し付けられた胸は、早いリズムを刻んでいた。
生きている人間の刻む鼓動。
それが、無性に嬉しくて。
なめらかな胸に頬をすり寄せ、シンはその肌の放つ甘い香りをいっぱいに吸い込む。
「こ・・・ら」
そうしたら、アスランの長い指が、シンのくしゃくしゃの髪に差し込まれ。
そうして、くい、と気持ちのよい力で引っ張った。
「うごけ・・・よ」
いつもよりも、ずっと深く、甘い声で。
いつもからは、考えられないほどにイヤラシイこと、言って。
「ん・・・も少し」
シンはもう２回、アスランにイかせてもらっている。だから今は、この人の甘い肉を、ゆっくりと楽しみたいのだ。
アスランが、熱い吐息を深く吐く。
その熱に誘われて、ぐいと無理やり身を伸ばし、その人のキスを欲しがった少年は、望んだとおりに甘い唇をたっぷりと味わって。
「ん・・・」
幸せも、いっしょにたっぷり味わっていると、アスランが急にシンの胸を押し、唇を離した。
もっと、キスしたいのにな。
そう思って、また、顔を近づけようとして。
シンはそのまま、シーツの顔面を突っ込ませた。
「わ」
そうして、なんにもしていないのに、視界がぐるりと回って。
あれ？
気がつくと、アスランの翠の瞳を見上げていた。
紅く上気した頬にかかった髪の先から、ぽとり、と、汗がひとしずくシンの胸に落ちる。
え
ええーーーっ！
シンのものは、いまだにたっぷりと。たっぷりすぎるほどにたっぷりと、アスランの気持ちの良い襞に包まれている。
ていうことは、これって。
「だから・・・ちゃんと動け、って、お前・・・・」
アスランが甘い声を出すと、中まで響いてゾクゾクする。
「・・・・動いてくれるの？」
「―――っ！」
それ以外にはないだろう体勢になってしまっているのに、そう聞かれたアスランは、紅い頬をいっそう紅くして、翠の瞳でシンを睨んだ。
うわ、やべ。
可愛い。
しかも。
「・・・・してやるから、感謝、しろよ」
そう、低くかすれた声で言うと、シンを包んだ甘い肉が、きゅうっと彼を絞り込んだ。
そうして、ずる、と、半分ほどが、その肉から抜け出て。
また、たっぷりと包み込まれる。
うわぁ・・・・
シンは下肢から沸き起こる快感と、目の前で繰り広げられる絶景に、完全に釘付けになった。
シンの上で腰を振るアスランは、紅い唇をちいさく開き、かたち良い眉をきつく寄せて。
翠の瞳を半眼にして、大きく胸を喘がせている。
「んっ・・・・は・・・・・ふ・・・・ぅん・・・・・・・」
恐らく、感じる場所に当たったのだろう。
きゅうっと一度目を閉じると、そのまま、その深さで何度もシンを締め付けた。
「くっ・・・っ、う、ふ・・・・くんっ」
シンの腰を挟み付けて、必死の動きをしていた膝が、びくびくと不規則に震え出したのが分かった。
「ん、・・・シ、ン・・・・・っ」
あ、この声。
イキそうなアスランの、声。
あまりの気持ちよさと良い眺めに、呆然と丸太になっていたシンは、たまらず、腰を突き上げた。
アスランの腰が落ちてくる、丁度、そのタイミングだった。
「はんっ！」
アスランの背中がびくりと反った。
はたはたと、熱い何かがシンの胸に散る。
「・・・っ、こ、の」
さっきまで、気持ちよさそうに啼いていたアスランが、とろりと濡れた翠の瞳で、可愛らしく睨んできて。
「あ・・・すいません」
思わず謝ったシンは、その時初めて、自分もアスランの中でイっていたことに気がついた。
でも、まだシンはアスランの中。
熱くて甘くてぐちゃぐちゃしてて。
すっげ、きもちいー
「んっ・・・」
アスランが、思わず、という風情で喉を鳴らす。
シンのものが、また、自分の中で大きくなったからだ。
「えっと、あの」
シンは、快楽でいっぱいいっぱいの頭を必死に回してから。
とりあえず、と、ゆっくりとアスラン乗ったままの腰を揺らす。
「あ、はっ・・・」
アスランの腰も、ゆるりと揺れて。
「俺も動きますから、また、いい？」
きゅっと掴んだ腰が、汗で滑った。
もう一度、指に力を込めなおすと、アスランの肌は気持ちの良い弾力で、シンの指を弾き返した。
「しかた、ないな・・・」
アスランは、手の甲で唇を拭っている。
それが間に合わなかった唾液が、ほたり、と、シンの胸に落ちる。
もの凄く、イヤラシイ眺めだ。
「ありがとう、ございます」
『お許し』が嬉しくて、シンは掴んだ腰を一生懸命に突き上げた。
それに合わせるようにして、アスランも淫らに腰を振って。
甘い肉が、きゅうきゅうと。
シンを包んで、気持ちよくしてくれる。
「んっ、あっ・・・ん・・・・っ」
甘い甘いアスランの声に、この人も気持ちいいんだ、と、嬉しくなって。
シンは、アスランの中で。
アスランに包まれながら。
その甘い肉の中へ、何度も何度も注ぎ込むのをやめられなかった。
「うー」
きゅうきゅうと甘えてくる少年の背を、アスランは苦笑してやさしく叩く。
「こら・・・お前、今日は勝手だぞ」
まあ、シンが勝手なのは、今に始まったことではないけれど。
「あんただって勝手じゃないですか」
「・・・・お前のせいだろ」
アスランは、恥ずかしさに突っ伏して。しかし突っ伏した先が、懐いたシンの肩先だったものだから、なんだか更にいたたまれなくなった。
「なんでです」
なんでって、そんなこと決まっている。
少年のつたない愛撫に焦らされて、何も考えずに乗ってしまった。
あんな体位、強要でもされない限り、したことはなかったのに。
それなのに。
「ねえ、乗っかるのって、好きなんですか？」
キラキラと鮮やかな瞳を光らせて、甘えん坊の少年は、YESの答えを期待して覗き込んでくる。
あんまり寂しそうだったから、思わず手を差し伸べてしまった。
甘えられて、そんな彼に慰められる。そんな、どうしようもない関係なのだけれど。
でも
「好きなわけないだろ。もうしないぞ」
「なんでですかぁ」
むくれてみせる少年の、甘い声。
熱い肌と、真っ直ぐな瞳。
甘くアスランを狂わせる、体。
「なんででもだ。ほら、寝ろよ」
「いやだ・・・」
もっと甘えたい、と、しがみ付いた少年の、その心地良い、甘い肉。
「一発で眠らせてやろうか」
「う・・・寝ます」
軽く拳を示して見せると、その威力を知っている少年は、大人しくアスランの腕の中に収まった。
アスランはひとつため息をついて、シンの背中を抱いてやって。
甘い肌をすり寄せて、甘い眠りに落ちていく。
シンの大好きな甘い肉は。
甘い甘い、恋人の味。