３
はぁはぁと、忙しなく息を継ぐ音。
それから、くちゃくちゃと、淫靡に粘質な水音。
時折上がる、甘い声。
そんなものに、部屋中が支配されていた。
やがて、それらの音が高まって。
「やっ、あ・・・っ！」
一際高い声と共に、唐突に、止んだ。
そうして。
「どうでしたかっ！？」
勢い込んだ少年の、真剣な声に。
二人、同時に吹き出した。
「なんなんですか、なんで笑うんですかーーーっ！」
シーツに突っ伏したまま、くつくつと笑っていたアスランは、笑い過ぎの涙も隠さないまま、自分の上に乗り上げたままのシンを見上げて、また、笑う。
「いや、だって。お前、かわい・・・・っ」
「可愛いって何ですか！俺はどうだったかって聞いてんです！」
ぎゃんぎゃんと吠えたシンに、枕元に腰掛けて、グラスを傾けていたイザークは、ニヤリと笑った口で、一言。
「モウスコシガンバリマショウ、だな」
「アンタには聞いてません！」
シンは更に激昂し、本気でイザークに掴みかかった。
そんなシンの様子を微笑ましく見上げていたアスランは、そのままずるりと起き上がり、後ろから抱きしめるようにして、少年の汗を含んだ髪をくしゃくしゃと撫でた。
「いや、シンは頑張っていて可愛かったぞ？」
「なんですかそれーー！！」
きゃんきゃんと叫ぶシンは、本当に可愛い。
「ああ、そうだな。頑張っていたな」
「だろ？あの一生懸命な感じがかわ・・・・」
「バカにすんな！！」
キレたシンに、心外だと言わんばかりにアスランが反論する。
「何言ってるんだ、馬鹿になんかしてない」
「そう言う貴様の心根が卑しいということだ」
「アンタはしてる。アスランさんはボケてるだけだけど、アンタは俺のことバカにしてる！」
シンの叫びに、
「ボケてるって・・・・」
と呟いたアスランの、むっと尖らせた唇に。
シンの肩越しに顔を近づけたイザークは、そのまま酷くナチュラルに、ちゅっ、っとキスをした。
「そのボケに付き合ってやるのが、甲斐性というものだろうが」
言って、イザークはばさりとシャツを脱ぎ捨てる。
『先攻』をシンに譲ってやったから、これからは『後攻』の時間だ。
「そんな甲斐性いらないぞ」
「貴様が言うな」
「アンタがゆーな」
二人一緒に突っ込まれて、アスランは更にむっとした。
つい先ほどまでの、少年との行為で紅潮した頬に、そんな子供っぽい表情。
それを目と鼻の先に見てしまったシンは、同じくらいに頬を赤くする。
可愛いのはアンタの方じゃないか。
そう思って。言おうとして。
「混ぜてやってもいいが、貴様はオマケだぞ」
先にイザークにそう言われ、言おうとしたことなんか、一瞬で忘れた。
「混ぜてくれなくたっていいですよ！」
精一杯の少年の意地。それを。
「だってお前、ソレどうするんだ」
シンの肩越しに、その足の間を覗き込んだアスランが、さらりとソレを指摘した。
「ガンバッタ小僧には褒美だな」
フン、と笑うイザークの顔が憎たらしい。
「だからいいって言ってんですってば！」
ずるりと二人の間から身を引こうとしたシンを、しかしアスランは自慢のバカ力で、背中からしっかりとホールドしてしまった。
「いいから、ほら」
そうして。
少年の逃げ腰を、くるりと回して真正面。
そのまま、屈んで。
あーん、と、口を開けて。
「アンタって人は・・・・っ」
大好きな人に咥えてもらって、嬉しくないわけがない。
わけがない、んだけど。
「サービス良すぎるぞ、貴様」
「んん」
御機嫌のアスランの後ろにイザークが回り、つい先ほどまでシンの入っていたソコにつぷりと指を突っ込んだ。
そんなのを見るのは、やっぱりちょっと。
かなり、ヤダな。
そう思ったシンは、足の間でふごふごと蠢くアスランの髪をさらさらと撫で回す。
この二人の間に割り込んだのは、シンの方だ。
アスランが可愛がってくれるのをいいことに、強引にねじ込んで・・・いろんな意味でねじ込んで。
それを許す男も、どうかしてると思うけど、でも。
「一回で随分出したな。・・・おい、本当に一回か？」
「んんんっ」
「一回ですよっ！」
アスランは何かんーんー言っているが、その頭を股間に押さえ込んで、シンはそう言い張った。
一回だったってば！
「まあ、そういうことにしておいてやってもいいがな」
ああこいつ今鼻で笑いやがったー！
「ん」
「うわ」
怒りに立ち上がりかけたシンの腰を、アスランが腕と口で押さえ付けた。
深く咥え込まれて、シンの腰が砕ける。
そうして。
「んんーん」
ぐっとイザークが入ってきたのが、アスランの体を通じてわかった。
しきりとんぐんぐ言っているのは、シンにしてくれているのか、それとも喘いでいるのか。
シンにはまったくわからない。
「今日二度目なのに、随分締まるじゃないか」
「俺がちっちゃいって言いたいのかよ！」
怪しい敬語も吹っ飛んだ言い様に、イザークは腰を揺らしてアスランを責め上げながら。
「よくわかったな」
と、また腹の立つことを。
「バカにすんなっ！」
シンは、アスランに咥えられたまま、こんどこそ、その取り澄ましたツラをぶん殴ろうと、シーツに付いた膝に力を込める。
そのとき。
「んーーーっ！」
不意にアスランが大きく唸った。
唸って、シンのものにきゅーっと吸い付いた。
「わ！って、アンタ！」
それは、いまだ物慣れない少年には良すぎる刺激で。
「っ！」
とたん、イザークもひとつ息を飲む。
アスランの腰が、淫らにうねり、そうして。
「こ、の、馬鹿者が・・・っ」
あ、イったんだ。
イかされたんだ。
ザマーミロ！
思わず喜んだシンの腰から顔を上げて。
白い飛沫で口を汚して、脚の間に、注がれたものをこぼしながらアスランが。
「お前ら！俺を挟んでケンカするな！」
そう、もの凄く偉そうに叫んで見せた。
「挟んで、って・・・・・」
少年の、思わず洩らした声に触発されて。
二人、同時に吹き出した。
「笑うな！」
「ご、ごめんなさ・・・・でも挟んでって、はさん・・・っ！」
「また挟んでやる。代われ、小僧」
「え、あ、ハイっ！」
「うわお前ら！」
イザークは、そのままぐいとアスランを押さえ付けて。
二度目を許されたシンは、喜び勇んでその言葉に従った。
そうして、アスランは。
「なんで急に仲良くなるんだ！」
「同じものが好きだからな。趣味は合うんだろう」
「そうですよ大人しくしてください！」
シンに、腰を。
イザークに、顎を取られて。
ふさがれて。
んーんーとまた唸りながら、それでもアスランは幸せで。
大好きな二人の間で、また、んっ、と、啼いた。